家の価値とは様々あると思います。市場的な価値を思い浮かべる人も多いかと思いますが、僕らのような設計事務所を運営している人間としては、住む上での価値も大切であると思います。ということで今回は僕らが思う住む上での家の価値にフォーカスしてさらに深堀できればと思います。
目次
設計事務所が考える面積制限、崖地での家の価値
①そもそも面積に制限がある地域
この住宅が建つ地域は最大建蔽率30%、最大容積率50%という、そもそもに面積制限がある土地でした。こういった土地ではご家族が思い描く広々とした住まいと離れてしまう計画になることも多く、まずはできる限り最大建蔽率、最大容積率を確保するように計画しました。
②崖という特徴
もう一つのこの土地の特徴として東側が崖地となっており、こちらが高台側だということです。5mの高さだと一般的には2階に窓を設けてもそれより低い位置に取りつくことが多く東側のプライバシーはこの崖によってある程度担保されていました。そういったことから崖側に開いた広々とした空間をご要望されました。崖地とは敬遠しがちな土地ですが、しっかりと設計を行えば眺望を含めた魅力の多い土地となります。
天白の家で思う価値
①開く解放感
大きな窓を設けるということは光が入り、風が抜け、風景を楽しむことができます。さらには視線の抜けを確保することにもつながり、床面積以上の広さを感じることができます。しかしどうしても断熱性能やプライバシーを気にして開口部を小さくしたいと考える方もいらっしゃると思います。壁に対して確かに窓の部分は断熱的には不利になります。さらに壁であれば覗かれる心配もなくプライバシーを阻害されることはありません。しかし窓を設けなければ、その土地のポテンシャルや家族の理想の住まい方、光や風に満ち、拡がりを持った空間になることはないと思っています。今の窓は性能が格段に良くなっており、断熱性能も向上しています。少し価格が上がりますが、樹脂サッシ、トリプルガラスサッシ、寒冷地用のサッシなどを付けることも可能です。プライバシーにしても計画の中で考えプライバシーを守りながらも、どうしても気になる場合はカーテンやブラインドなどで視線を遮るなどフレキシブルな対応も可能です。しかしながら窓を設けていない場合、フレキシブルどころか、選択肢はありません。
②見る窓と使う窓
建蔽率30%とは思っている以上に敷地に空白を残します。道路側に駐車場を設けてもまだ敷地が余っている状況でした。そのため南側にも掃き出しの大きなサッシを設け、崖側では叶わないバーベキューやプールができる庭として開放しました。それにより崖側の「意識の中で拡がりをもたらす窓」と「生活に直接関わる窓」の2種類の窓を設けることができました。外部と直接関わることのできる窓というのは非常に大切だと考えており、見る窓と使う窓を別々に設けることができたこの住宅の暮らしは非常に豊かなものになると思います。
まとめ
大きな窓は敬遠されることがあります。しかしながら窓を開けることで初めて得られることもあります。外の景色、季節の移り変わり、植物の匂い、太陽の光、風の心地よさ。これらは窓があることによってはじめて得られる体験です。家の中で外と関わることができるというのはその場所で暮らしていく上で、多くの豊かさを与えてくれます。むやみやたらにたくさん窓があればいいというわけでもありません。どこか家の中で一つでも外と関われる家であってほしいと思いますし、そういった設計を行っていきたいと思います。
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